公開日 2014年12月25日

分割調剤の拡大は長期処方による飲み残し薬剤の「ムダ」を削減する調剤報酬改定の目玉であった。「特定機能病院及び500床以上の地域医療支援病院から処方された場合に、処方医に連絡しつつ、処方された薬剤を原則分割して調剤し、2回目以降は、患者の主治医と連携し、必要量を調剤する」という要件で提案されたが、診療側委員の反対意見で附帯意見に留まった。
算定要件から見ると、大病院の医師からの長期処方薬を対象にしたものだが、これはあくまで「試行的導入」である。一度報酬設定がされれば規模を問わず、全医療機関が影響を受けることは明白だ。
在宅分野でも残薬管理が遡上に上がっている。今年10月の医療保険部会では訪問指導時における残薬等の管理によって約400億円の薬剤費削減になるとの資料が提出された。
経済財政諮問会議が提出した「骨太の方針2014」は、「調剤重視から服薬管理・指導重視への転換」のもと、薬剤師が処方変更の必要がないかを直接確認した上で一定期間内の処方箋を繰返し利用する制度(リフィル制度)等について検討するとし、中医協も今後議論することを確認した。
リフィル処方箋は一回の処方を分割調剤して残薬管理を行うというだけではない。一定の期間内に薬剤師が、調剤可否、受診要否を判断したうえでその都度調剤する。
慢性疾患の増加を名目に長期投薬が認められて以降、患者の受診頻度は低くなった。ただでさえ経済的な受診抑制が取り沙汰されるなか、リフィル処方箋制度はその傾向をさらに増長させるだろう。受診抑制は医療機関経営にも多大な影響を及ぼす。
リフィル処方箋に見られる産業競争力会議や日本経済再生本部のいう「医師以外の職種の役割拡大」は医師の役割を縮小し、安上がりな医療制度を創るということだ。
チーム医療の本質は「多種多様な医療スタッフが連携・補完しあい、専門性を発揮した安全で的確な医療を提供すること」だ。リフィル処方箋という形での薬剤師の役割拡大が医療上有益なのかどうか、医師の専門性とは何かを考えなければならない。
そもそも医療を経済に合わせるのではなく、必要な医療が行えるように財源は確保されなければならない。
(『東京保険医新聞』2014年12月25日号掲載)