公開日 2017年03月25日
本紙12月25日号でも報告の通り、昨年11月に協会が実施した会員アンケートでは、都内7割の小児科・内科の医療機関で麻しん・風しん混合ワクチン(以下、MRワクチン)が不足し、定期接種を打ち終えない可能性が5割にのぼる事態となった。協会は国に対して定期接種(特に2期)の延長措置や安定した流通体制の確保を求める一方、自治体に対しては未接種児へのフォローアップ制度の早期導入・拡充を要望。来年度から足立区が対象者・回数を拡充、板橋区が新たに助成制度を開始するなど、一定の成果を得ることができた。
2期接種漏れの懸念――協会、都内自治体へ任意接種助成制度の充実を要望
東京都は麻しん・風しん対策として、MRワクチン未接種児への任意接種助成事業を取り組む区市町村に経費の半額を補助してきた。23区では2016年度新たに新宿区、品川区、大田区、台東区で開始され、21区が同制度を実施している。
今回、国が2期接種期間を延長しない場合でも、自治体の任意接種助成制度があれば、任意接種扱いではあるが、住民は自己負担を気にせず接種を受けることができる。そこで協会では、昨年12月16日に都内で助成制度を行っていない自治体へ制度設置を求める要望書を提出した。
足立区:助成対象者・回数を拡充
足立区では2009年度からいち早く任意接種助成制度に取り組んでいたにもかかわらず、対象者を「1回も接種したことがない者へ1回分のみ助成」としていたため、現在実施中の21区中、最も要件の厳しいことが協会の調査で明らかとなった(表1)。
現行制度のままでは懸念される2期接種漏れに対応できないことから、協会では対象者の拡充と助成回数を最大2回までとすることを区議会議員へ要望。
長谷川たかこ区議(民進党)が平成29年第1回足立区議会定例会代表質問、平成29年予算特別委員会等で3度にわたり取り上げ、区医師会からも要望書が提出された結果、区長指示で見直しが決まった。これを受け3月14日の厚生委員会にて、協会の要望どおり、対象者の拡充と最大2回までの助成が実現した(表2)。
同議員によると予算措置が必要な施策を、議員提案でこれだけ短期間に通すことは極めて珍しいという。医療現場の不足の実態と接種漏れに対する危機感が区へ伝わった結果といえる。
変更後(2017年度) | 現 行 | |
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対象者 | 対象ワクチンを一度も接種していない又は一度しか接種したことがない者で、かつ麻しん又は風しんに罹患したことがない者 | 対象ワクチンを一度も接種していない、かつ麻しん又は風しんに罹患したことがない者 |
助成回数 | 対象ワクチンを一度も接種していない者には2回まで、一度しか接種したことがない者は1回まで | 一人1回 |
年齢 | 2歳~高校3年生相当まで(2期接種期間を除く)(変更なし) | |
接種費用 | 全額助成(変更なし) | |
接種場所 | 足立区内の指定医療機関(変更なし) | |
備考 | 事前に各保健センター等または保健予防課の窓口で、母子健康手帳持参のうえ、該当予防接種の予診票の交付を受ける(変更なし) | |
リンク | 足立区ホームページ「平成29年4月1日から麻しん・風しんワクチンの任意接種公費負担制度の助成回数が最大2回までになります」 |
板橋区:4月から助成開始
MRワクチンの任意接種助成制度がなかった板橋区は、医師会からの要望もあり、この4月から同制度の導入が決まった(表3)。
ただし、区部では唯一自己負担が設定されていることが課題として残されている。
対象者 | 第1期及び第2期、又は両方の定期接種が完了していない者で、接種日現在、板橋区に住民登録のある者 |
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助成回数 | 1人2回まで |
年齢 | 2歳~19歳未満(2期接種期間を除く) |
接種費用 | 麻しん風しん混合ワクチン 1,000円 麻しん/風しん 単抗原ワクチン 各500円 |
接種場所 | 板橋区内の指定医療機関 |
備考 | 事前に区予防対策課へ連絡の上予防対策課窓口で手続きが必要 |
リンク | 板橋区ホームページ「麻しん風しん混合(MR)ワクチン任意接種助成事業について」 |
なお、昨年10月に定期接種化されたB型肝炎ワクチンについて、接種期間が短かった4~7月生まれの子に対して区として独自に接種期間を延長する(表4)。
対象者 | 2016年4月1日 ~ 7月31日生まれの子 |
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助成回数 | 1人1回まで |
延長期間 | 2017年4月1日 ~ 7月31まで |
備考 | 事前に区予防対策課へ連絡の上予防対策課窓口で手続きが必要 |
リンク | 板橋区ホームページ「B型肝炎ワクチン任意接種助成事業について」 |
港区:23区で唯一、助成制度なし
同じく任意接種助成制度のない港区に対して、協会は2月20日に陳情書を提出し、各会派へ趣旨説明を行った。区議会でも複数の議員から質問が上がったが、現時点で区として制度導入の動きは見られない。港区は、麻しん・風しん接種率が1期・2期ともに都内最下位の水準であるうえ、人口流動が激しく、外国人の流入も多い。23区で唯一、任意接種助成制度を持たない区となったことも踏まえ、協会は引き続き制度設置を求めていく。
(『東京保険医新聞』2017年3月25日号掲載)
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【MRワクチン任意接種助成】足立区・板橋区が拡充・新設!協会の働きかけ実を結ぶ(『東京保険医新聞』2017年3月25日号)[PDF:1021KB]