【シリーズ】参議院選挙後の患者負担増計画(1)/市販類似薬の保険はずし

公開日 2016年05月05日

4月から湿布を処方する際、1処方につき日数もしくは1日用量を、70枚超の場合はその理由まで書かなければならなくなり、うんざりした先生方も多いのではないか。こうした厄介な診療報酬の改定の裏には、政府がもくろむ患者負担増計画の一端が関わっている。

このコラムでは、6回にわたり、7月の参議院選挙後に進められようとしている様々な負担増計画について解説し、問題点を指摘していきたい。

市販類似薬をねらい撃ちする財務省

政府が保険はずしをもくろむ市販類似薬
・ビタミン剤
・うがい薬
・湿布
・目薬
・漢方薬

財政制度等審議会の建議において、「(医療費削減のために)市販類似薬は処方の目的や方法にかかわらず保険給付外とすべき」とされている。

2012年改定でビタミン剤が、2014年改定ではうがい薬が、それぞれターゲットとなった。今回の「湿布薬騒動」もまったく同じ状況で、当初湿布薬を完全に保険収載から外そうとしたものの、医療界の猛反発に遭い、最終的に記載要領を追加することでどうにか決着した形だ。

無論、政府がこれで諦めるはずはなく、セルフメディケーションの名の下、市販類似薬の保険はずしを可能な範囲で2017年から実施することをめざしている。

しかし、患者の自己判断で市販薬を服用し続ければ、必要な受診の遅れや症状悪化、副反応を招き、重症化する例も出てくるおそれがある。結果的に政府が期待する医療費の削減には繋がらないことを、医療者は訴え続けていかなければならないだろう。

参照価格制度の導入で、新薬が選べない!?

政府はまた、後発医薬品(ジェネリック医薬品)の普及をさらに図るため、「参照価格制度」の導入も計画している。これは医療保険の給付上限を後発品の薬価の範囲内に限定することで、先発品を処方する場合に差額をすべて患者負担とするしくみだ(図)。

図_参照価格制度のしくみ

後発品には品質や安定した供給に不安がある。しかし、窓口負担が大幅に増えるため、患者の支払い能力によって後発品を処方せざるを得なくなる。これでは薬の選択に不平等が生じてくるおそれがある。皆保険制度の理念に反するといわざるを得ない。

政府は2017年半ばまでに同制度を導入するとしているが、参議院選挙を前にして、こうした患者負担増計画は一切国民に知らされていない。

(『東京保険医新聞』2016年5月5・15日合併号掲載)