保険医の生活と権利を守る東京保険医協会

医療機関への個別指導対策

指導とは

 国民皆保険制度のもと、保険診療を行うにあたっては保険医療機関の指定を受け、保険医の登録を行うこととされています。
 保険診療は「公法上の契約」に基づく契約診療であることから、医師法、医療法、健康保険法、療養担当規則および診療報酬点数表等を遵守しなければなりません。そのため、保険制度が円滑に運用されるように行政機関によって行われる行政指導のことを、保険医療機関への「指導」といいます。

指導の種類

 指導大綱には、以下の3つの指導形態が定められています。

 ① 集団指導
 ② 集団的個別指導
 ③ 個別指導
   ・新規指定(継承で開設者が変更になった場合も対象)
   ・既指定

① 集団指導

 大きな会場において講習会形式で行われるもので、新規指定にあたっての講習会や、診療報酬改定時に厚生局と医師会が共同で開催する「点数説明会」などがこれにあたります。
 講習会が終わればそこで完結し、その後の措置や処分といったものはありません。

② 集団的個別指導

 集団的個別指導は、講習会形式の「集団部分」と個々の医療機関毎の面接形式の「個別部分」からなるとされていますが、東京では現在集団部分のみが実施されており、講習会形式で90分間行われます。講習会後に、改善報告書の提出や自主返還はありません。
 選定対象は、15の類型区分別に1件当たりのレセプトで基準平均点(診療所は平均点数×1.2倍、病院は×1.1倍)を超える医療機関を対象に、上位8%が選定されます。なお、前年度及び前々年度に個別指導・新規指導・集団的個別指導を受けた医療機関と、当年度に個別指導・新規指導を予定している医療機関は選定から除外されます。(参考リンク:東京都の2017年度各科別平均点数を掲載)

③ 個別指導(新規指定・既指定)

 個別指導は、新規指定を対象にするもの(新規指導)と、既指定を対象とするものに分けられます。新規指導は、新規指定後概ね半年から1年以内に実施することとされていますが、東京は開業数が多いため、開業してから約2年後に指導が実施されるケースが多いのが実状です(2018年時点)。

 既指定の医療機関に対する個別指導の選定理由は、以下の4つに分けられます。
 (1) 「情報提供」:被保険者(患者)・審査支払機関等から診療内容・診療報酬の請求に関する情報提供があり、厚生局が必要と認めた医療機関
 (2) 「再指導」:前回の個別指導・新規指導の結果が再指導になった医療機関
 (3) 「高点数」:前々年度に集団的個別指導を受け、前年度も高点数である医療機関(上位から)
 (4) その他:監査の結果、戒告・注意となった医療機関や、正当な理由なく集団的個別指導を拒否した医療機関
 しかし、実際にどのような理由で選定されたのかは、医療機関側には明らかにされません。

指導と監査の違い

 指導と監査は混同されがちですが、監査は個別指導の結果などにより、保険診療の内容又は診療報酬の請求について、架空・付増請求等の「不正」や「著しい不当」が疑われる場合に、保険医療機関の指定の取消など行政上の措置を前提に行われるものです。
 監査が行われる前には、レセプトによる書面調査や患者等に対する実地調査(患者調査)が行われ、それらの調査に基づいて監査が実施され、終了後に行政上の措置(「取消処分」「戒告」「注意」)を採るかどうかが決められます。

個別指導実施までの流れ

 個別指導の対象となった場合、実施日の概ね1ヶ月前に、医療機関に宛てて実施通知が送られてきます。
 実施通知には実施日・時間・場所等の他、当日持参を求められる書類等(持参物)が記載されます。持参物の中には指導対象として選定された患者のカルテが含まれますが、対象の患者の通知については新規指導と既指定の個別指導とで以下のように異なります。
 ●新規指定:患者10人分のリストが実施日の1週間前に送付される。
 ●既指定:患者20人分のリストが実施日の1週間前に、10人分が実施日の前日に送付される。
 指導当日に持参するカルテは原則「初診時から」とされています。
 なお、患者リストの通知については、以前は送付が1週間前のものが4日前であったなど更に厳しいものでしたが、全国の保険医協会・医会などの粘り強い運動により現在の形式に緩和された経緯があります。

個別指導にあたって注意すること

 個別指導に呼ばれたら、まずは実施通知に記載されている持参物を準備し、チェックしましょう。よくわからないからといって、指定されている書類等を持っていかなかったり、著しい不備があったりすると、指導の中断(後日改めて指導を行う)ということにもなりかねません。
 指導の場で重点的に見られるのは、カルテ記載です。特に管理料などを算定している場合、通知にある「管理内容の要点を記載する」を満たす記載が無いと、「算定要件を満たしていない」などとして診療報酬の「自主返還」を求められる場合もあります。患者の主訴や指導内容、検査の結果評価などを日頃からしっかり記載していくことが大切です。また、指導内容を正確に把握するため、録音も申し出ましょう。

保険医協会にご相談を

 個別指導はあくまでも行政指導であり、教育的観点で行われるべきものですが、残念ながら指導の場で「失礼なことを言われた」「まるで犯罪者扱いのように感じた」といった声もあります。医療機関への個別指導については相談できる窓口が極めて少なく、孤立感や強い不安に苛まれる当事者も多いようです。保険医の自主的な判断でのみ行われるべき「自主返還」が実質的に強制されているのではないか、という意見もあります。
 保険医協会では、個別指導に関する相談や質問を会員限定で承っています。一人で悩まず、まずは保険医協会へご相談ください。


関連リンク

「開業医の実態意識基礎調査」から(3) 個別指導―“協会へ相談”が4割超
2018年度指導計画―5月31日 集団的個別指導を実施
都福祉保健局と懇談「指導をめぐり意見交換」
「新規個別指導」対策講習会に150人―指導は突然やってくる、現場からの対処法
個別指導体験(23区・内科)― 通知が来て協会にすぐに連絡「味方がいる」と安心